決められないときに、まず選択肢を整理する方法
選択肢は並べてみた。良いところも気になるところも書き出した。それでも、どれにも決めきれない。
そんなとき、「自分は優柔不断なのかもしれない」と感じることがあります。ただ、決められない理由が決断力だけにあるとは限りません。「何を決めたいのか」「何と何を比べているのか」「何を大切にしたいのか」が、頭の中でひとかたまりになっているだけ、ということもあります。
この記事は、答えを出すためのものではありません。決める前の段階として、選択肢を整理する方法を五つの論点に分けて示した地図です。上から順に読む必要はなく、いま一番引っかかっているところから入ってもらえれば十分です。
選択肢を整理する方法は、「減らす」より先に「分ける」
整理というと、選択肢を絞り込む作業を思い浮かべやすいかもしれません。けれど、最初にやることは、絞ることよりも分けることだと考えています。決められないとき、次のような論点が同時に動いていることがあるからです。
- 何を決めようとしているのか(問い)
- どんな選択肢があるのか(選択肢)
- 何を大切にして選ぶのか(判断軸)
- 選んだあと、どれくらい戻れるのか(後悔の大きさ)
- 今は決められる状態なのか(タイミング)
この五つが混ざると、一つ考えるたびに別の不安が顔を出して、堂々巡りになりやすいように思います。分けて眺めるだけで、「止まっているのはここか」と見えてくることがあります。
いま、どこで止まっていそうか
診断ではないので、当てはまる数に意味はありません。目安として読んでください。
- 何を決めたいのか、一言で言いにくい
- 頭に浮かぶ選択肢が、AかBの二つだけ
- 選択肢はあるのに、何で比べればいいのか分からない
- 「間違えたくない」という気持ちが一番強い
- 焦りや疲れが強くて、落ち着いて考えられない気がする
一番近いものを一つ選んで、対応する論点から読んでみてください。
まず問いと選択肢を見直す
「転職するかどうか」を考えているつもりで、実は「いまの職場から離れたい」のか、「収入を上げたい」のか、「先行きが見えなくて不安」なのかが混ざっている。そういうことがあります。最初に、いま決めたいことを一文で書いてみてください。一文にならないなら、問いがまだ複数に分かれている合図かもしれません。
選択肢を洗い出す段階では、良し悪しの判断はいったん置いておくのがおすすめです。「これは現実的ではない」と思った案も、書くだけ書いておくと、あとで「なぜ自分はこの案に惹かれたのか」を考える材料になることがあります。
選択肢が二つしかないように見えるときも、視野が狭くなっている場合があります。AとBを部分的に組み合わせられないか、小さく試してから決められないか、と考えるだけで、道が増えることがあります。
「AかB」の形でどうしても身動きが取れなくなっている場合は、二択の構造そのものを扱った記事が助けになるかもしれません。
→ 「AかB」で考えるほど決められなくなる理由
また、選択肢を調べるほど不安が増えて、頭が疲れていると感じるなら、情報や問いの量を減らす方向から考える方が合っている場合があります。
→ 考えすぎて決められないときにやること
「何と比べるか」が決まっていないと、比べても決まらない
この記事のなかで、いちばん時間をかけてほしいのがここです。
選択肢の比較がうまくいかない背景には、比べる軸がはっきりしていないことがあります。軸がないまま比べると、そのとき目についた情報や、その日の気分に引っ張られやすくなります。
軸を見つけるには、次の二つを自分に聞いてみると手がかりになります。
- これだけは手放したくない、と感じるものは何か(時間、健康、収入、人間関係、安心感など)
- 今回は、多少ゆずってもいいと思えるものは何か
すべてを満たす選択肢は、そう簡単には見つかりません。だからこそ、完璧な優先順位でなくてもいいので、「ここは譲れない」と「ここは調整できる」を分けておくと、判断のよりどころになります。
たとえば、引っ越し先を迷っているとします。あくまで書き方の例ですが、縦に選択肢、横に軸を置くと、次のような形になります。
| 通勤の負担 | 家賃 | 静かさ | 友人との距離 | |
|---|---|---|---|---|
| 選択肢A | 軽い | 高め | やや不満 | 近い |
| 選択肢B | 重い | 抑えられる | 満足 | 遠い |
点数をつけて合計で決める必要はありません。ここで見たいのは、「どの軸で、どちらが強いのか」と、「自分がいちばん気にしているのはどの軸なのか」です。書き出してみて、思ったより差がないと気づくこともあります。それもまた、整理が働いたということです。
軸が思い浮かばないときは、選択肢を眺めて、「なんとなく惹かれる」「なんとなく引っかかる」と感じるところに目を向けてみてください。その理由を言葉にしてみると、自分でも意識していなかった軸が見つかる場合があります。反対に、周りの人が大事だと言っているから軸に入れているだけ、というものが混ざっていることもあります。自分が本当に大事だと思っているかを、一つずつ確かめてみてください。
後悔をゼロにするのではなく、小さくする
「間違えたくない」という気持ちが強いと、正解を当てようとして動けなくなることがあります。そんなときは、正解かどうかではなく、次のような角度から眺めてみる余地があります。
- 選んだあと、方向を変えられるか
- うまくいかなかったとき、失うものは何か
- 選んだことで、何が分かりそうか
後悔を完全になくすことはできなくても、小さくなる選び方を考えることはできます。
「正解を選ばなければ」という重さがなかなか手放せない人は、次の記事で、やり直しやすさや損失といった視点をもう少し丁寧に見られます。
→ 後悔しない選択より、後悔を小さくする選び方
焦りや不安のなかにいるときは
整理を進めても、なぜかしっくりこないことがあります。そのとき、選択肢や軸ではなく、いまの自分の状態が影響している場合もあります。強い焦りや疲れがあるときは、判断がぶれやすいと感じる人もいます。
期限が迫っている場合を除いて、決断を先延ばしにするのではなく、判断しやすい状態に戻すために一度止まる、という選び方もあります。その期限は本当に動かせないものか、誰が決めた期限なのか。それを確かめるだけでも、気持ちが少し落ち着くことがあります。
止まることは逃げることとは違い、「何が整えば決められそうか」を考える時間にもなります。
大きな決断を目前にして落ち着かない人は、次の記事で「一度止まった方がよいのはどんなときか」を確認してみてください。
→ 大きな決断をする前に、一度止まった方がいいとき
決めたいテーマが、はっきりしているなら
ここまでは、テーマを問わず使える考え方でした。悩みの中心がすでに仕事やお金にあるなら、それぞれの領域に合わせた入り口から読む方が近道になります。
転職を考えていて、「辞めるか残るか」の前に何を考えればいいのか分からない人は、こちらから始めてみてください。
お金の不安が漠然としていて、何に困っているのか自分でも言葉にしにくい人には、不安を二つに分けて見る考え方が役に立つかもしれません。
→ お金の不安を「不足」と「見えない」に分けて考える
今日、5分でできること
紙かメモ帳を一枚だけ用意して、次のことを書いてみてください。決める必要はありません。
- いま決めたいことを、一文で
- 思いつく選択肢を、良し悪しを考えずに全部
- 「これだけは手放したくない」と思うものを、三つまで
ここまでで十分です。頭の中にあったものが外に出て見える状態になれば、それが最初の一歩になります。
決められないのは、力が足りないからではなく、材料が見えないままだからということもあります。もしいま一つだけ紙に書くとしたら、あなたが今回の決断で手放したくないものは、何でしょうか。